服の上から「盗撮」無罪から逆転有罪ナゼ?

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2022.01.15 13:11

服を着た女性の後ろ姿を無断で撮影するのは、違法行為か─。「盗撮」の認定について争われた裁判で、東京高裁は今月12日、新聞配達員の男(51)に懲役8か月の逆転有罪判決を言い渡した。1審の無罪から一転、2審で実刑判決に覆った理由とは。

■「無罪」が一転…

「原判決を破棄する。被告人を懲役8か月に処する」

無罪判決を取り消し、実刑を言い渡した裁判長の言葉で、法廷に緊張が走った。

被告の新聞配達員の男(51)は、2020年、東京・町田市にあるアニメグッズ店で、手に持った小型カメラで20代の女性の後ろ姿を至近距離から撮影したなどとして、東京都迷惑防止条例違反の罪に問われた。

去年1月、1審の東京地裁立川支部が男に言い渡した判決は「無罪」。しかし今月12日の2審・東京高裁の判決は一転、執行猶予なしの実刑判決となった。

1審と2審で分かれた無罪と有罪の判断。一体なにが裁判官たちの頭を悩ませたのか─。

■スカートの裾近くに小型カメラ

判決によると、男は犯行当日、手のひらにおさまるサイズの小型カメラを使って、白いブラウスにフレア型のスカートをはいたAさん(20代)の後ろ姿などを至近距離から動画で撮影した。

その後、撮影をストップし、左半身を下げるような姿勢で、Aさんの左後方に近づいた男。Aさんが書籍コーナーで漫画を読み、少し前かがみになった際に、小型カメラを握った左手をスカートの裾と同程度の高さにし、レンズをAさんの下半身に向けた。異変に気づいたAさんに声をかけられると、男はその場から逃走したが、最終的に店員に身柄を確保された。

■服の上からの撮影は「卑わいな言動」か否か

裁判の争点となったのは、男の撮影行為などが、条例で禁止する「卑わいな言動」で、「人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為」にあたるかどうかだった。

1審・東京地裁立川支部で行われた裁判で、男の弁護士は、「被告人は普通にしていても目に触れることができるようなAさんの横からの姿や後ろ姿を撮影したにすぎず、この行為は卑わいな言動にはあたらない」と無罪を主張した。

そして、去年1月の判決公判で同支部は男の行為について、「社会通念上、相当な行為とはいえない」と指摘しつつも、撮影された後ろ姿の動画について「客観的に見て、尻や太ももなどの特定の部位をねらい、それらを強調して撮影されたものとはいえない」と判断。男の行為は、下品でみだらな「卑わいな言動」にあたらないとして、無罪判決を言い渡した。

■動画の内容よりも男の行動を重視し逆転有罪

一方、今月12日に行われた2審・東京高裁の判決では、「結果として性的意味合いのある部位が映っていなかったからといって、そのことだけで禁止行為にあたらないということはできない」として、動画の中身を重視して無罪とした1審の判断を厳しく非難した。

その上で、「被害者や周囲の人から見て、衣服で隠されている下着などを撮影しようとしているのではないかと判断されるものについては、違法行為にあたると判断するのが相当」として、犯罪にあたるかどうかの基準には、動画の中身だけでなく、撮影を試みる行為についても考慮すべきだとした。

そして、この基準を今回の男についても当てはめ、一連の行為について「Aや周囲の人から見ても、スカートの中などを撮影しようとしているのではないかと判断されるものであった」と指摘し、「卑わいな言動」にあたるのは明らかだとして、男に懲役8か月の実刑判決を言い渡した。

動画の中身を重視した1審判決に対し、2審判決は「下着などを撮影しようと試みたか」という行動に重きを置いて判断する形となった。

■検挙の現場にも高いハードル

「おしりの形がくっきりわかるズボンをはいている女性に、とても性的興奮を覚えた」

去年8月、東京・JR新宿駅でズボンをはいていた30代の女性の尻部分を携帯カメラで撮影したとして書類送検された別の男は、警視庁の調べに対し、このように供述。自宅からは、ズボン姿の女性の尻部分を映した動画が80本以上も見つかった。

捜査幹部は─

「服の上からの盗撮行為は起訴できるか、有罪にできるかに、常にハードルがある。しっかり条例違反に該当するまでの証拠をつかむため、慎重に捜査する必要がある」と話す。

■繰り返し議論される「服の上からの盗撮」

過去に最高裁でも争われたことのある「服の上からの盗撮」。2006年、北海道のショッピングセンターでズボンをはいた女性の尻部分をねらい、約5分間で11回にわたり携帯のカメラで写真撮影した行為が「卑わいな言動」にあたるかが裁判で争われた。

被告の男については、今回のアニメグッズ店での事件と同様、1審では無罪、2審では有罪と判断が分かれた末に、最高裁で有罪が確定した。

この時、最高裁は「ズボンの上から撮影されたものであったとしても、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らか」と指摘したが、5人の裁判官のうち1人は「無罪」の反対意見を述べ、全員一致とはならなかった。

最高裁でも意見が割れた「服の上からの盗撮」。今回、東京高裁で逆転有罪判決を受けた男は、最高裁に判断を仰ぐのか─。上告の可否が注目される。